1.研究の背景は?
若者はお酒を飲む場ではサワーや洋酒を好むことが多く、日本酒との間に距離を感じます。筆者も日本酒を口にする機会はあまりなく、種類の多さや個性・味の主張の少なさから飲み始めるのに躊躇しました。そこで「若者のライフスタイルにあった飲み方を提供することができれば、若者と日本酒の距離は縮まるのではないか」という仮説を立てました。
2.研究プロセスは?
先行事例の調査
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飲酒の実情についての調査
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缶チューハイと日本酒の比較調査
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日本酒に関する意識調査
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「酒カクテル」試飲イベントの実施
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「酒カクテル」のデザイン提案
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考察・まとめ
3.先行事例は?
女性向けのボトルデザインは存在していましたが、日本酒とカクテルを組み合わせた商品(味を連想しやすいデザイン)は見当たらなかったため、本研究のテーマには新規性があると判断しました。
4.飲酒の実態は?
男女それぞれについて、年代別の飲酒率を調査しました。結果としては飲酒を最も「習慣」としているのは50代男性で、最もしていないのは20代女性。ですが「お酒が好き」と回答したのは60代男性の次に20代女性が多いと分かりました。
お酒が好きでも飲酒を習慣化しない理由は、「健康のため」「金銭的理由」「一緒に飲む相手がいない」という意見が多数でした (厚生労働省調べ cancamアンケート参照)。
また飲酒の場としては、外飲みよりも家飲みを選ぶ人が増加しています。特に女性は周りを気にせずにゆっくりお酒を楽しめることに魅力を感じているようでした。そして家では主に一人で飲み、種類は缶ビール・缶の発泡酒に続いて缶チューハイが多いことが分かりました(アサヒグループ調べ)。
5.缶チューハイと日本酒の違いは?
女性や若年層が缶チューハイを選ぶ理由を調査したうえで、日本酒と比較しました。
まず缶チューハイを購入する際の重視点は男女共に「価格」であり、少量を飲みたい・色々な味を試したい・度数を選びたいというメリットも大きいようです。また、女性は季節ごとの新商品にも目を向けていることがわかります。缶チューハイは飲み方の多様性で人気を博していると思われます。
では日本酒はどうでしょうか。昭和女子大学現代ビジネス研究所が公開している「日本酒の女性市場拡大等に関するアンケート調査」では以下の結果が提示されています。
(N=468人として)
このように日本酒の飲酒率は低く、嫌いと感じる人は全く飲まない傾向があります。また筆者が行ったアンケート調査でも、若者は「日本酒は飲まない」と回答した割合が高く、その理由は「高齢者が飲むイメージ」「悪酔いしそう」「高い」「量が多い」「味が苦手」等が多く上がりました。
こうした調査から、日本酒の課題はボトルのデザインではなく、味や値段へのイメージから日本酒を飲む機会や習慣がないことだと考えました。
6.新ジャンル「酒かくてる」とは?
若者や女性に人気の缶チューハイの要素を日本酒に足すことで、負のイメージを打開しようと考えました。量を少量にし、度数を抑え、人気のフレーバーと炭酸で割り、サワーのような日本酒として「酒かくてる」を提案しました。
「酒かくてる」の試飲会を行なったたところ、日本酒が苦手な人でもおいしいと感じることができました。半面、日本酒が好きな人からは、日本酒本来の良さや味が薄まってしまい残念という意見も聞かれました。
さらにデザイン制作も行いました。どれもモダンさと伝統を組み合わせたもので、可愛らしさと日本的な良さとを兼ね備えたデザインにしています。
7. まとめ
本研究は、既存の日本酒と制作物とでデザイン、飲みやすさを比較することで結論付ける予定でしたが、実際は調査・イベントの実施・デザイン制作までとなりました。最終発表後に再度アンケート調査等を行い、フィードバックを集めたいと考えています。また、本研究の成果として筆者自身が日本酒を飲めるようになったため、今後試飲会や「酒かくてる」の普及によって若者と日本酒の距離は縮められるのではないかと感じています。
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