~「ボッチャ」の競技体験を事例として~
研究の背景は?
筆者はスポーツに継続的に取り組んでいるほか、障がい者スポーツ文化センターで3年以上アルバイトしたこともあり、障がい者のスポーツに興味がありました。また、パラリンピックへの関心をより高めたいと思いました。
どんな仮説を立てたの?
「パラリンピックの競技を体験することで、パラリンピックや
行われる競技に対する関心が高まるのではないか」というものです。
パラリンピックの競技体験ができるイベントで参加者の意識の変化を感じたので、この点を検証しようと思いました。
研究のプロセスは?
既往研究の調査
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パラリンピックの競技・関連イベントの調査
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実験の実施(パラリンピック競技体験が、パラリンピックへの関心に影響を与えるかの実験)
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考察と研究のまとめ
パラリンピックの歴史と現状は?
・第二次世界大戦で脊髄を損傷した兵士のリハビリテーションとして、医師グッドマンの「手術よりスポーツを」の理念で始められました。
・現在のパラリンピックの競技は、夏季22競技、冬季6競技があります。
代表的な競技は、夏季は陸上、水泳、車いすバスケがあり、冬季はアルペンスキー、スノーボード、車いすカーリングがあります。オリンピック(夏季33競技、冬季15競技ほど)と比べると圧倒的に競技数が少ないといえます。
・全国で行われているパラリンピック活性化や認知度向上のためのイベントを調査しました。この目的に特化したイベントは予想以上に少数でした。神奈川県の福祉の総合イベント、「ヨコハマ・ヒューマン&テクノランド」の中でパラリンピック競技の体験コーナーがあり、筆者もボランティアとして参加しました。
・ワン・トゥー・テン・ホールディングスは、パラリンピック競技のボッチャをサイバースポーツとして展開するプロジェクション&センシングパラゲーム「CYBER BOCCIA」を開発し、エンターテインメント性を高めたものを提案しています。
どんな実験をしたの?
・学内で実施しやすいこと、健常者と障がい者の双方が同時に行えるという点から、競技は「ボッチャ」を選択しました。
・事前にオリンピックやパラリンピックに対する関心やアンケートを行ないました(対象:関東学院の学生19歳~22歳、合計35名)。
期間は2018年9月から10月でした。男女の構成比は男性24名、女性11名でした。
・全員にボッチャを体験してもらいました。
ゲームは、赤チーム、青チームに分かれ、3試合を戦いました。
・競技の後、先のアンケートとほぼ同じ質問内容のアンケートを実施しました。
・アンケートの分析を行い、競技体験の前後で関心の度合いなどが変化するかどうかを調査しました。
ボッチャの競技(実験)
https://youtu.be/eOTzFY1YBaE
※ボッチャのルール
試合のコートは、幅6m長さ12.5m。
「ジャックボール(目標球)」と呼ばれる白いボールに向かって、 赤と青それぞれ6個のボールを投げる、転がすなどしてどれだけジャックボールに近づけられるかを競う。
実験の結果と考察
・ボッチャの認知度
実験前:「聞いたことがある」「知っている」を合わせても25.7%
・テレビや競技場での東京オリンピックの観戦希望は51.4%で、競技体験前後で変化しませんでした。これはパラリンピックについても同様でした。
・オリンピック、パラリンピックの関心度は、実験の前後でやや変化しました。
オリンピック: 65.7%→77.1%(11.4%上昇)
パラリンピック:60.0%→65.7%(5.7%上昇)
・パラリンピック全体の観戦希望から比較すると、ボッチャの観戦希望は高いことが分かりました。
・競技を体験をすることで関心は高まることが分かったので、全国の普及イベントは意味のあるものだと考えます。実際に体験することで魅力に気付けるので、体験型イベントや施設が増えれば良いと考えます。
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