-ラストワンマイル問題の克服-
研究のきっかけは?
私はは一人暮らしをしており、郷里からお米や野菜など重量物が宅配便で送られてきます。それを受け取るために時間指定を行い、何時間も在宅しないとならないことに不便を感じました。
これは筆者に限ったことではないと思って調べたところ、単身世帯が全世帯の34.3%(2015年国勢調査)に及び、共働き世帯も多いことから、再配達になる荷物が15%に達していると分かりました(国土交通省調べ)。
研究のプロセスは?
既往研究の調査
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顕在化している課題を調査 (※ラストワンマイルを中心に)
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課題の解決策を提案
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結果と考察
※ラストワンマイルとは、各物流拠点から荷受人まで配送する配達の最終段階にネックがあることを示している。最後の1マイルの意味。
顕在化している課題とは?
ユーザーの宅配便に対する不満を明らかにしました。不満要因を喜田二郎氏の考案したKJ法により宅配サービスの不満要因を構造化しました。「面倒はごめんだ」「セキュリティに不安があり怖い」「サービスを追加することで、余分なお金がかかるのは嫌」という主な不満が明らかになりました。
宅配各社の取り組みを調べました。以下がその取り組みになります。
・ヤマト運輸…ロッカーの「PUDOステーション」、それを発展させた「クロネコスタンド」、地域密着型の「ネコサポ」、SNSの活用
(実証実験の段階)ドライバー不足に着目した「客貨混載」
・佐川急便…24時間荷物を追跡できるセキュリティサービス
(実証実験の段階)AIを導入の取り組み
・日本郵便…配達員と荷受人が対面せず受け取れる置き配、宅配ロッカーの「はこぽす」、SNSの活用
(現在は郵便局間のみの配達)ドローンの活用
・アマゾン…配達の効率化を高めるため、ラストワンマイルに対して共通のシステムを用い複数の企業に委託している。
宅配ドライバーへのインタビュー
現在のサービスや現場での不満について伺ったところ、大きく分けて三つの問題点が挙げられました。
・荷送人が時間指定を行なっていること
・何度も同じ荷物の再配達の依頼をする荷受人が存在していること→ 1件の不在配達により、その後の2件の配達に影響する。
・再配達時間帯による偏り
特に20-21時は当日中の再配達依頼が多い。これ以上時間指定を細分化してユーザーの「待ちたくない」というニーズに応えるのは難しい。
課題の解決策の提案
再配達が多いのは荷受人が自宅にいる時間帯をドライバーが把握することが難しいためで、SNSの活用により一定程度把握できたとしても、配送ルートの設定や予期せぬ不在もあるため解決には至らないと考えました。
そこで筆者は、乗合型の自動運転によるロッカー付き輸送車を提案しました。これは、荷受人と荷物とを一緒に運ぶといったもので、ドライバーを必要としません。重さや大きさのために自身では運べない荷物、またサービス展開の少ない生ものなど、これまで自宅配送を余儀なくされていた荷物を対象にしています。
手順としては、注文した荷物が最寄りの集荷所に届いたと通知を受け取った後、荷受人は受け取りたい場所と日時を設定します。その後、配送員が荷物を詰め込んである輸送車に荷受人が乗り込み、自宅まで乗車することで受け取り完了とします。荷物は車内のロッカーに積まれており、取り出す際はQRコードをスキャンすることで鍵が開くようにし、KJマップで導かれた「セキュリティ面の強化」も図りました。
結論と考察
本研究では宅配便の再配達の問題に着目し、先行事例や現地調査、ユーザー調査を行ないました。
提案は、いまだ実現していない自動運転を前提とするため、現状でのサービス展開は難しいといえます。しかし、既に自動車メーカーはAIによる運転アシストの実証実験を行なっており、自動運転に向けた取り組みも存在しているので、近い将来この提案は実現可能だと考えます。
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